岡山大学 Alumni(全学同窓会)
グローバル人材育成支援事業 グローバル人材自己啓発奨励金事業 体験レポート
岡山大学 農学部 総合農業科学科 2年
吉田和奏
CEC International Volunteer Program in Cebu
(2025.09.11~09.17)
【活動概要】
私は大学2年の夏休みを利用して、CECジャパンネットワーク株式会社の海外ボランティア活動でフィリピンのセブ島に約1週間行きました。リゾート地として有名なセブ島ですが、経済格差が顕著であり、人口の4分の1が貧困という統計もあります。観光地のすぐ裏の路地で過酷な環境な中日々の生活を営む子どもたちや、海の上に不安定な家を建てて暮らす家族、そして両親とは離れ孤児院で暮らす子どもたちやその子供たちを支える人々など様々な人との出会いがありました。中にはつらい境遇を経験してきた人々もいましたが、それでも未来を語るときの表情はいつも明るく、力強さを感じました。私はそこで暮らす子どもたちや家族などと関わりながら、生活環境や教育の現状、そして人々の温かさ、そして幸せのあり方を直に知ることができました。そして、自分の専門やこれからの将来に対する考えが生まれ、セブ島でのボランティア活動が大きな経験となりました。
【主な活動】
・海上スラム
海の上に板やトタンで建てられた家々は、常に潮の満ち引きや波の影響を受け、決して安定した環境とはいえませんでした。家の下にはゴミが浮かび、衛生状態も悪いのですが、そこで暮らす人々は常に家族内でも、家族間でも協力して生活をしていました。子どもたちは物質的には乏しくても、私たちが訪れると笑顔を絶やさず、歌や遊びで交流してくれました。彼らの姿は、困難な環境にあっても人は希望を見いだせるということを私に教えてくれました。また、この地域では漂流してきたペットボトル容器を回収し、綺麗に洗った後に熱を加えて変形させ、花のストラップにして観光客に販売をしていました。「これも大事な収入源だから」と女の子の家族を想う言葉が今もずっと心の中に残っています。
決して安定した暮らしではないこの土地での生活ですが、そんな中だからこそ人々は協力をし、そして支えあいながら生活をしているのです。今まで私が思っていた幸せだけが、本当の幸せではないこと、経済的な豊かさが幸せに直結しているということではないことを強く感じました。そして、このような環境で人々が健康に過ごしていくためにはどのような設備が必要であるのか、そしてどのような支援を行うことができるのかについて考えるきっかけになりました。

海上スラムの様子。海上スラム内の教会から撮影
・観光地のそばのスラム
観光地として人気であるサントニーニョ教会の裏には、観光客の目にはほとんど触れないスラム地域が広がっていました。そこに暮らす子どもたちの中には、苦しい生活環境の中でも学校に通い続けている子どもが多くいました。中にはCECがサポートを続けていることがきっかけで、日本語で自己紹介ができる子もいました。日本人ボランティアとセブの子どもたちでペアになり、セブの子どもたちに日本語を教えると同時に、わたしも現地の主要な言語であるセブアノ語を教えてもらい、お互いの言語で自己紹介ができるようになりました。自己紹介でなにか言いたいことはあるかと聞いたときに、みんな必ず将来の夢をいえるようになりたいと答えてくれました。先生になりたい、看護師になりたいなど目を輝かせながら夢を教えてくれ、教育が希望の灯火となっていることを実感し、改めて教育の持つ力、そして持つべき力を強く感じました。また、支援を短期的に行うのではなく、持続的におこなうことへ必要性や子供たちの未来を築いていくサポートをしていくことへの重要性を、身をもって感じることができました。

セブの子どもたちとの記念写真
・孤児院
フィリピンには家族をとても大切にする文化が根付いています。確かにどの地区に行ってもセブの人々は常に家族を想っており、私自身も様々な家族と関わる中で温かみを感じる場面が多くありました。その一方で、そのような文化から出てくる問題もあります。その一つが中絶についてです。妊婦自身が中絶を受けた場合の一般に2から6年の刑罰が科されたり、医療従事者が中絶を行ったり、助けたりした場合は、より重い刑罰が科される。資格停止などの処分が含まれることもあります。これには、「母親の命が危険な場合」「強姦・近親相姦による妊娠」「胎児に重大な異常がある場合」など、中絶を例外的に認める明文の規定はありません。医師が命救うための処置をすることができる“緊急避妊”や“必要な医療行為”と解釈される状況は議論があるものの、法律上の明確な保証はない状態です。フィリピンの中絶禁止法は、単に政府が決めたルールではなく、社会全体が共有する「命を大切にする」「家族を神聖視する」という価値観の反映です。このような状況でも性犯罪等を含む望まない妊娠は現在も多数存在しており、そんな中で生まれてきた子どもは捨てられてしまうのです。そのため孤児院は様々なところにあると現地のボランティアサポーターに教えてもらいました。私が実際に訪れた孤児院では20人近くの孤児たちが暮らしていました。この子供たちを支えているのは現地のボランティアたちです。私はそのボランティアの手伝いをさせてもらいました。大量の洗濯物を手洗いで丁寧に洗っていたり、子どもたちに食事を作りそれを全員にきちんと与えたりなど休む暇もなく、働いていました。血のつながりがなくても、彼らは子どもたちを「自分の家族」として支え、愛情を注いでいました。しかし、他のボランティアで出会った子どもたちと比べるとどこか寂しそうにしている様子も伺えました。家族からの愛のこうした状況は社会全体が抱える課題を浮き彫りにしています。中絶を禁止することで命を守るという理念は尊いものですが、その一方で母親や子供たちを守るための支援体制が十分に整っていないことが問題だと考えます。女性が安心して相談できる場所や望まない妊娠を防ぐための教育や支援が広がること、そしてすべての子どもたちがたくさんの愛情の中で暮らしていくために、行政や政府を筆頭とする社会はどうあるべきなのか深く考えるきっかけとなりました。
【今後の展望】
今回、初めて海外での活動に参加し、セブ島のスラム地域で「子どもの貧困」、そしてそれに付随する「教育」や「衛生環境」、「持続的な支援の必要性」、「社会の在り方」などの多岐にわたる課題を、身をもって学ぶことができました。そして、様々な観点からセブの街と触れ合うことができました。
私は、問題解決の第一歩は「知ること」だと考えています。インターネットで詳細に知ることができる情報であっても、現地に行き、人々と交流して初めて見えるもの、そして感じるものがあることを確かにセブ島の人々や環境から学びました。今後は、さらに経験を重ねながら自分にできることを明確にし、実際の行動へと移していきたいです。また、どのような活動においても周囲の人の支えや協力は不可欠です。これらの経験をもとに、今後は「知る」だけで終わらせず、自分にできる行動を一歩ずつ積み重ねていきたいと思います。私は農学部に所属し、教職課程も履修しています。この経験を、農学的な知識を活かした栄養や食糧問題への貢献、そして教育と結びつけ、育や食・環境そして教育の観点から人々の暮らしを支える方法を模索していきたいと考えています。
将来は、国際協力の現場で人々の生活に寄り添い持続可能な支援を考えることができる人材を目指します。そのためにも今後も現地での体験や学びを重ねながら自分にできる一歩を大切にし、着実に将来に繋げていきたいです。