岡山大学 Alumni(全学同窓会)
グローバル人材育成支援事業 グローバル人材自己啓発奨励金事業 体験レポート
岡山大学医学部医学科3年
グローバル人材育成特別コース 田中 杏依
National Model United Nations in Erfurt, Germany 2023
(19th November ~ 25th November 2023)
はじめに
今回参加した NMUN は、12カ国の50以上の大学から集まった大学生約300人と国連を模した会議を通じて国際政策について議論する、世界最大規模の学生国際会議である。私はアルゼンチンの代表として、国連環境総会(UNEA)の委員会に参加した。私にとってはじめての NMUN でうまくいかない点も多かったが、様々な気付きを得られた有意義な一週間だった。
参加背景
模擬国連の存在は高校生の頃から知っていた。国際協力に携わりたいという思いから、将来 WHO で働くことに興味があったので、国連の会議を模した場で国際課題について学生同士で議論のできる模擬国連に参加することに、ずっと憧れを抱いていた。2 年の春に G コースを通じて MUN の授業を受けることができ、JUEMUN に参加した。国際課題について深く調べて考えるいい機会になると共に、同じように国際課題に興味をもつ学生と関わりをもて、とても面白かった。発言しやすい雰囲気だったおかげで積極的に発言することができ、私の提案がいくつか決議書に盛り込まれるなど、活躍することができて楽しかった。しかし同時に物足りなさも覚えたため、次は世界各国から集まった優秀な人たちと議論して、自分の実力を試したいと思い NMUN 参加に至った。
活動内容
はじめの二日間は cultural tour に参加し、ドイツ中心部にある第二次世界大戦の強制収容所や冷戦時代の東西ドイツの国境、世界遺産にもなっているヴァルトブルク城を巡った。最後には、開催地であるエアフルトのユダヤ人との関わりに焦点を当てた散策も行った。ドイツの景観はどこにいっても映画の中の世界で心が躍った。事前知識があるともっと理解が深まり、感動できたのではないかと思う場面も多く、教養の大切さを痛感した。さらにドイツと日本の戦争に対する向き合い方の違いも印象深かった。

その後三日間で模擬国連が開催された。私は Dilyora と共にアルゼンチンの代表として UNEAの委員会に参加した。そこでは「気候変動・生物多様性の損失・大気汚染の対策について」、「都市開発における資源の有効活用の促進について」の二つに関する議論が行われた。気候変動などについて私たちは、多国間協力を促進し、国家レベルでの協力が必要であることを主張した。また、私が主に担当したのは2つ目の資源活用についてで、アルゼンチンの都市開発における環境問題解決でカギを握るのは交通機関の整備だとし、現代の自動車社会から脱却する必要性を示唆すると共に、現在の技術では限界があるため、急速な研究開発促進に力を入れるよう呼びかけた。さらに、地球環境問題に対するガイドラインなどは各国で定められているのにもかかわらず、資金不足のためにその多くが実行されていないことに着目し、金融システムの構造、過程を見直す必要性を主張した。
会議は、全体に向けて各国の代表がスピーチを行う Formal session と、グループに分かれてそれぞれで決議書の案を作成する Informal session が交互に開かれた。Informal session は、100人以上いる代表と提案を共有し、交渉することでグループを作ることからはじまる。この交渉で、自己紹介をしあった後まずは相手の意見を聞き出して、その意見のいいところを見つけて褒めたのち、自分の意見を共有するというマナーを学んだ。私は南米でチームを作りそれぞれの強みを生かして協力し合おうという案に賛同し、主に南米の代表が揃うグループで活動した。上記のより具体的な案として、「NGO 間をつなぐシステムを構築し、NGO間の連携を深めることでより強固な資金調達の基盤を確立する。」という内容を決議書に盛り込むことを目標に各国の代表と議論を進めた。ここでは、即座に自分の役割を見出しグループに貢献する力が試された。じっとしていて誰かから役割が与えられる訳ではなく、自らこのグループに足りないものを客観的に分析し役割を見つけなければならなかった。私は主に、メンバーのアイデアを聞いてブラッシュアップしたり、意見がぶつかったときに双方の意見が反映されるような着地点を見つけたり、決議書の相互点を見つけて掲載する順番を提案したりした。また、私の意見が決議書に採用されるようにも働きかけ、無事に採用された。メンバー全員が各自の役割を果たし、決議書の採択に向けて団結した時間はかけがえのないものとなった。
会議が終わる頃になってしまったが、Formal session でスピーチを行うこともできた。各国の代表が強いキャッチフレーズを用いて各自の主張を訴えかける中、私が一番伝えたいのは協力してくれた代表らへの感謝だった。初めての NMUN で分からないことが多い中、みんな私に丁寧に教えてくれたことに感謝を伝えた。さらに、みんながこのような心をもって団結すれば、世界は平和になるとアピールした。私にしかできないスピーチができたと満足しているが、次はもっと語彙力をつけてかっこいいことも言えるようになりたい。
今後の展望
中でも今回最も苦戦したのは、日本との会話の内容の違いだった。友達になる過程の会話で、自己開示が強く求められていると感じた。日本では、生活や趣味などの当たり障りのない典型的な質問をしあう中で、共通点を見つけ親近感を得て仲良くなっていく。一方、世界では自分の好きなことや夢や目標を共有し、自分はどういう人か提示し、相手が自分を気に入って敬意を示してくれた時にぐっと仲が深まる。私はこのような会話に慣れておらず、自己開示することに羞恥を覚えてしまいうまく会話することができなかった。より深く自己分析を行い、自信を持って自分を伝えられるようになりたいと思う。
今回の NMUN では与えられたテーマについて問題提起を行い、対策を考えるところまでが課題だったが、その先の対策法を実行していくところにも関わってみたくなった。調べていく中で、広く 周知されている国際課題について対策が停滞している1番の原因は、ガイドラインなどを実践できていないことなのではないかと気付いた。次は海外ボランティアなどに参加し、実際に自分の手で 国際課題解決に向けた対策の実践に関わってみたい。
さらに、現在はドイツで出会った他大学の医学生からのお誘いを受け、WHO の日本支部で行われる WKC フォーラムの運営学生として、Planetary Health という広い枠組みで、地球環境や紛争、食糧不足、情報格差など、私たちの健康を脅かす国際課題を見つめ、どのように健康を守っていくのかについて全国の学生と議論している。引き続き広い視野を持って、国際的な視点で物事を捉えられるように様々な活動を行っていきたい。

おわりに
一日中専門的なことについて英語で議論することは想像以上に過酷で、身体的にも精神的にも厳しかったが、得られたものも多かった。私がしんどい時はグループメンバーをはじめ、ボランティアスタッフなどたくさんの人たちが気にかけて声をかけてくださり、何度も助けられた。たくさんの人の支えがあり、無事に最後までアルゼンチンの大使としての任務を遂行することができたことを誇りに思い、心から感謝している。
また、最後になりましたが、至らない点も多かった私を信じ、一緒に現地まで赴き最後までサポートしてくださった Caleb Prichard 先生、JUEMUN の授業で指導をしていただき、私に MUN の楽しさを教えてくださった Neil Cowie 先生に、この場を借りて改めて感謝申し上げます。
